初夏の庭周回。2025年6月7日
ビヨウヤナギ(美容柳)(未央柳)の育て方|キンシバイとの違いから剪定、花言葉まで徹底解説!
梅雨の空の下、しっとりと濡れる庭でひときわ鮮やかな黄金色の花を咲かせる「ビヨウヤナギ」。その名は「美容柳」あるいは「未央柳」と書かれ、見る人の心を惹きつける優雅な佇まいと、世界三大美女の一人・楊貴妃にまつわるロマンチックな物語を秘めています。
この記事では、そんなビヨウヤナギの魅力を余すところなくお伝えするとともに、初心者の方でも安心して育てられるよう、基本的な情報から、よく似たキンシバイとの明確な見分け方、花付きを良くする剪定のコツ、増やし方、そして心に響く花言葉まで、あらゆる情報を網羅して徹底的に解説します。
「庭木を探しているけど、何がいいか分からない」
「ビヨウヤナギとキンシバイの違いがいつも曖昧…」
「剪定の仕方が難しそうで手が出せない」
そんなお悩みを持つあなたも、この記事を読み終える頃には、ビヨウヤナギの専門家になっているはず。さあ、一緒にその奥深い世界へ旅立ちましょう。
初夏に輝く黄金の花、ビヨウヤナギとは?
まずは、ビヨウヤナギがどんな植物なのか、その基本情報と魅力の核心に迫ります。
学名: Hypericum monogynum
分類: オトギリソウ科オトギリソウ属
形態: 半常緑〜落葉低木
樹高: 1m 〜 1.5m
原産地: 中国
開花時期: 6月~7月
花色: 鮮やかな黄色
ビヨウヤナギの最大の魅力は、なんといってもその繊細で華やかな花です。直径5〜6cmほどの5枚の花びらが美しく開き、その中心からは、花びらよりも長い金色の雄しべが、まるで線香花火のように放射状に無数に広がります。この繊細な雄しべが風にそよぐ姿は、まさに自然が作り出した芸術品。雨粒に濡れてきらめく様子は、梅雨の憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれるほどの美しさです。
開花期が長く、次々と新しい花を咲かせてくれるため、初夏から盛夏にかけての庭を長期間彩ってくれます。樹高は1m前後と比較的コンパクトに収まり、しなやかな枝がやや枝垂れるように伸びるため、優雅で涼しげな印象を与えます。和風・洋風どちらの庭にも自然に溶け込み、生垣や植え込み、シンボルツリーの根締めなど、様々な用途で活躍する汎用性の高さも魅力の一つです。
葉は光沢のある緑色で、枝を挟んで左右対称につく「対生」。半常緑性で、暖かい地域では冬でも葉を残しますが、寒冷地では落葉します。病害虫にも強く、栽培が非常に簡単なため、園芸初心者の方にこそおすすめしたい、美しさと強さを兼ね備えた理想的な庭木なのです。
楊貴妃の眉にたとえられた花? ビヨウヤナギの名前に秘められた物語
ビヨウヤナギには、その美しさを象徴する二つの漢字表記があります。「美容柳」と「未央柳」。それぞれの名前に込められた物語を知ることで、この花への愛着はさらに深まるでしょう。
美容柳:見た目の美しさを素直に表現
「美容柳」という名前は、その字の通り、花の美しさを称えたもの。長く繊細な雄しべを持つ華やかな花と、柳のようにしなやかに伸びる枝葉の姿から、「美しい柳」という意味で名付けられました。見た目の印象を素直に表現した、分かりやすい名前と言えます。
未央柳:玄宗皇帝と楊貴妃の悲恋の物語
もう一つの「未央柳」という名前には、中国・唐の時代の皇帝・玄宗と、彼の最愛の后・楊貴妃にまつわる悲しくも美しい物語が秘められています。
稀代の美女として知られた楊貴妃を深く寵愛した玄宗皇帝。しかし、その寵愛が国を揺るがす「安史の乱」を招き、彼はやむなく楊貴妃に死を賜るという悲劇的な決断を下します。
乱が収まり、都へ戻った玄宗皇帝は、かつて楊貴妃と共に過ごした宮殿の庭を眺め、悲しみにくれます。庭の太液池(たいえきち)に咲く蓮の花(芙蓉)を見れば楊貴妃の美しい顔を思い出し、未央宮(びおうきゅう)のしなやかな柳を見れば彼女の愁いを帯びた美しい眉を思い出すのです。
この時の玄宗皇帝の心情を、詩人の白居易(白楽天)は長編叙事詩「長恨歌」の中でこう詠みました。
太液芙蓉未央柳
(太液の芙蓉は未央の柳)
芙蓉如面柳如眉
(芙蓉は面のごとく 柳は眉のごとし)
現代語に訳すと、「太液池の蓮の花は(楊貴妃の)顔のようであり、未央宮の柳は(彼女の)眉のようだ」となります。
この詩の一節から、楊貴妃の美しい眉を彷彿とさせるしなやかな枝葉を持つこの花が「未央柳」と呼ばれるようになりました。ただ美しいだけでなく、歴史のロマンと悲恋の物語をその名に宿していると知ると、雨に濡れて咲く花の姿が、より一層情緒深く感じられるのではないでしょうか。
ビヨウヤナギとキンシバイの見分け方|雄しべと花の形が鍵!
ビヨウヤナギの話をすると、必ずと言っていいほど登場するのが、よく似た花「キンシバイ(金糸梅)」です。同じヒペリカムの仲間で、開花期も花色も似ているため混同されがちですが、ポイントさえ押さえれば誰でも簡単に見分けられます。もう間違わないために、決定的な違いを比較表で見ていきましょう。
比較ポイント ビヨウヤナギ(美容柳) キンシバイ(金糸梅)
① 雄しべ 長く、花びらを超える。線香花火のように放射状に広がる。 短く、花びらより内側に収まる。5つの束になっている。
② 花の形 全開に開く。平たい形。 半開きでカップ状に咲く。お椀のような形。
③ 葉の付き方 十字対生。葉が十字を描くように付く。 通常の対生。同じ方向に向かい合って付く。
④ 樹形 枝がしなやかで、やや枝垂れる。 枝がまっすぐ上に伸び、半球状になる。
⑤ 花の大きさ 直径5〜6cmとやや大きい。 直径3〜4cmとやや小さい。
見分ける最大の鍵は「雄しべの長さ」
最も分かりやすい違いは雄しべの長さです。
ビヨウヤナギ: 金色の長い雄しべが花びらからはみ出して、ふわっと広がっています。これが「美容」や「楊貴妃の眉」の由来となる優雅さの源です。
キンシバイ: 雄しべは花びらの内側にちょこんと収まっています。名前の通り、梅の花に似た慎ましやかな印象です。
花の咲き方にも注目
花の開き方も全く違います。
ビヨウヤナギ: 花びらが完全に開ききって、平たいお皿のような形になります。
キンシバイ: 花びらは完全に開かず、カップやお椀のような形をしています。
この2点、「雄しべの長さ」と「花の開き方」を覚えておけば、まず間違うことはありません。公園や庭先で見かけた際に、ぜひ観察してみてください。
初心者でも簡単!ビヨウヤナギの育て方完全ガイド|場所選びから剪定まで
ビヨウヤナギは非常に強健で育てやすい植物です。基本的なポイントさえ押さえれば、誰でも毎年美しい花を楽しむことができます。ここでは、植え付けから剪定、増やし方まで、栽培の全工程を詳しく解説します。
年間栽培カレンダー
植え付け: 3月~4月、9月~10月
開花期: 6月~7月
剪定:
花後の軽剪定:7月~8月
冬の強剪定:11月~2月
施肥: 1月~2月(寒肥)
栽培環境・場所選び
ビヨウヤナギは日光を好みますが、半日陰程度の場所でも十分に育ち、花を咲かせます。むしろ、夏の強い西日を避けられるような、午前中に日が当たる東向きの場所などが最適です。日当たりが良すぎると葉が焼けてしまうことがあります。
土質は特に選びませんが、水はけの良い土壌を好みます。植え付ける場所の水はけが悪い場合は、土に腐葉土や堆肥を混ぜ込んで改良しておきましょう。
植え付け
植え付けの適期は、春(3月~4月)か秋(9月~10月)です。
根鉢の2倍ほどの深さと幅の植え穴を掘ります。
掘り上げた土に、腐葉土や堆肥を3割ほど混ぜ込み、水はけを良くします。
ポットから苗を取り出し、根鉢を軽くほぐしてから植え穴に入れます。
苗木の高さが地面と同じになるように調整し、土を戻します。
株元を軽く押さえて土を落ち着かせ、水をたっぷりと与えます。
水やり
地植えの場合: 根付いてしまえば、基本的に水やりの必要はありません。真夏に日照りが続くような場合に、朝か夕方に水を与える程度で十分です。
鉢植えの場合: 土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与えてください。特に夏場は水切れしやすいので注意が必要です。
肥料
ビヨウヤナギは痩せ地でも育つほど丈夫なので、肥料はあまり必要ありません。むしろ、与えすぎると枝葉ばかりが茂って花付きが悪くなることがあります。
もし与える場合は、冬の休眠期(1月~2月)に、寒肥(かんごえ)として油かすや鶏糞、緩効性化成肥料などを株元に少量施す程度で十分です。
最重要!ビヨウヤナギの剪定
ビヨウヤナギを美しく保ち、翌年もたくさんの花を咲かせるためには剪定が最も重要な作業です。剪定をしないと枝が混み合って風通しが悪くなり、病害虫の原因になったり、樹形が乱れたりします。剪定は年に2回行うのが理想です。
① 花後の軽剪定(7月~8月)
花が終わったら、なるべく早く行いましょう。
目的: 咲き終わった花がらを摘み取り、株の消耗を防ぐ。軽く樹形を整える。
方法: 咲き終わった花の下、1〜2節の部分で切り取ります。伸びすぎて樹形を乱している枝も、この時に軽く切り戻しておきましょう。
② 冬の強剪定(11月~2月)
株が休眠している時期に行う、メインの剪定です。
目的: 樹形をコンパクトに仕立て直し、翌春に新しい枝を伸ばさせて花付きを良くする。
方法:
全体の切り戻し: まず、株全体を地面から1/3〜1/2程度の高さまで大胆に切り戻します。思い切って切るのがコツです。
間引き剪定: 次に、株の内側に向かって伸びる「内向枝」、他の枝と交差している「交差枝」、枯れている「枯れ枝」などを、根元から切り取ります。
古い枝の更新: 茶色く木質化して古くなった枝も、根元から切り落とします。これにより、株が若返り、新しい枝の発生が促されます。
この冬の強剪定をしっかり行うことで、翌春には勢いの良い新梢がたくさん伸び、そこにたくさんの花芽が形成されます。恐れずにバッサリと剪定してあげましょう。
増やし方(挿し木)
ビヨウヤナギは挿し木で簡単に増やすことができます。
適期: 6月~7月(剪定で切った枝を利用すると効率的です)
方法:
その年に新しく伸びた枝を10〜15cmほどの長さに切ります。
先端の葉を2〜3枚残し、下の葉はすべて取り除きます。
切り口を斜めにカットし、1〜2時間ほど水に浸けて吸水させます。
挿し木用の土(赤玉土や鹿沼土など)を入れたポットに、枝の1/3ほどを挿します。
水をたっぷり与え、日陰で土が乾かないように管理します。
1ヶ月ほどで発根し、秋には新しい芽が動き始めます。
病害虫
非常に丈夫で、病害虫の心配はほとんどありません。ただし、風通しが悪いとさび病(葉にオレンジ色の斑点ができる)やカイガラムシが発生することがあります。
これらの病害虫を防ぐためにも、冬の強剪定で枝の風通しを良くしておくことが最も効果的な対策となります。発生してしまった場合は、対応する薬剤を散布して駆除しましょう。
ビヨウヤナギの花言葉は「気高さ」。俳句に詠まれた初夏の風情
ビヨウヤナギはその美しい姿と背景の物語から、心に響く花言葉を持っています。
代表的な花言葉: 「気高さ」「多感」「幸い」「有用」
「気高さ」という花言葉は、楊貴妃の気品ある美しさに由来すると言われています。また、すらりと伸びた金色の雄しべが放つ、凛とした雰囲気からもこの言葉が連想されます。
「多感」は、最愛の人を失った玄宗皇帝の揺れ動く心を、風にそよぐ繊細な雄しべの姿に重ねたものかもしれません。
贈り物としてビヨウヤナギを選ぶ際は、こうした花言葉に想いを乗せてみるのも素敵です。
俳句に詠まれたビヨウヤナギ
ビヨウヤナギは夏の季語として、多くの俳人に愛されてきました。その姿は、日本の蒸し暑い夏に涼やかさと華やぎを与えてくれる存在として詠まれています。
金色の蕊(しべ)ふるはせて未央柳
- 星野立子
この句は、ビヨウヤナギの最大の特徴である金色の長い雄しべが、風に震える一瞬の美しさを鮮やかに切り取っています。「未央柳」という言葉を使うことで、背景にある楊貴妃の物語も香り立ち、句に深い奥行きを与えています。
びようやなぎつひに蕊見せてしまひけり
- 細見綾子
次々と咲いては散っていく花の様子、特に最後の蕊までもが見えなくなる情景を詠むことで、過ぎゆく夏の時間の流れと、一抹の寂しさを感じさせます。
このように、ビヨウヤナギは単なる美しい花としてだけでなく、日本の文化や季節感と深く結びついてきた植物なのです。
まとめ:美しさと強さ、物語をまとう理想の庭木
最後に、この記事のポイントをまとめます。
ビヨウヤナギは、長い雄しべが美しい黄金色の花を初夏に咲かせる丈夫な低木。
名前の由来は、見た目の美しさを表す「美容柳」と、楊貴妃の眉にたとえられた「未央柳」の二つがある。
よく似たキンシバイとは、「雄しべの長さ」と「花の開き方」で簡単に見分けられる。
育て方は非常に簡単で、日当たりと水はけの良い場所に植えれば、ほとんど手間いらず。
美しい樹形と花付きを保つには、冬の強剪定が最も重要。
花言葉は「気高さ」。その背景にはロマンチックな物語が隠されている。
ビヨウヤナギは、見る人の目を楽しませる華やかさ、初心者でも安心して育てられる強健さ、そして心を豊かにしてくれる物語性を兼ね備えた、まさに理想的な庭木です。
この記事を参考に、ぜひあなたのお庭やベランダにビヨウヤナギを迎えてみませんか。梅雨の雨に濡れ、夏の太陽を浴びて輝くその黄金色の花は、きっとあなたの毎日に彩りと幸いをもたらしてくれることでしょう。
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